朝から昼頃までカラスがマンションの周りに集まって騒いでいた。北九州一帯からだろう、数百羽が集合して鳴き喚くのだから、そのうるさいこと。

驚いた家内が「ほれ、階段の手すりにいっぱいとまっている」としきりに見せたがる。当方は例の出版物の整理をしていて、それどころではないので、生返事をしていると、家内は怒っていた。

朝っぱら家庭争議のもとになる、実に面倒な奴どもである。臨時総会でも開いて、好敵手の鳩対策でも喧々囂々、やっているのだろうと思う。

鳩はなかなか頭がいい。マンションに空き部屋でもあろうものなら、いつの間にかベランダで巣作りしている。その周りを糞だらけにして汚い。

だから住民に嫌われる。鳩の嫌いなトゲのある、においの強い植物を置いたり手摺りに鳩よけ防具を貼っても、ちょっと油断をしていると隅っこにちゃんと隠れて卵を抱いている。

本格的にネットを張っても継ぎ目や穴があるのを見つけて、鳩はやっぱり入り込んでいる。こんな鳩がカラスは嫌いである。多分餌場が競合するのだろう。

カラス専用と思っていたごみ置き場にいつの間にか鳩が侵入してきて、美味い餌を食い散らしている。それで頭にきたカラスが今朝、全員集合をかけて、徹底した追い出し作戦をやったのだろう。

カラスのやり方は強圧的でしかも連携プレーができるから確かに頭もいいだろう。その点鳩は夫婦で居場所を求めるだけで、そのやり口は平和的といえるかもしれない。しかし侮ることはできない。

昔、ベランダの隅で卵を温めていた鳩を見つけたことがある。一瞬、目があった。鳩が硬直している。赤い目がうるんでいる。近付くとやっと鳩は逃げた。後に白い卵が二個残っていた。

憐憫の情にかられて大目に見れば、鳩は大っぴらにやってきて、卵を抱くだろう。そうなれば我が家のみならずマンション全体に鳩を呼び込むことになる。憐憫の情か害鳥の駆除か、鳩は二者択一を迫るのである。

筆者は卵のある巣そのものを袋に入れ、近くの林にそのまま置いてきた。その後どうなったかはしらないが、後味が悪かった。

その点、カラスははっきりしている。少々不気味な黒い鳥がゴミ捨て場をあらし、汚す。だから見たらすぐ追い散らす。追っ払われたカラスは近くの電柱に止まって、じっとこちらを見ている。

人間はいっまでも居るわけはないと心得ているので、平気の平左である。やり口は男性的で、人を小ばかにしている。まあ、そんなところかカラスと鳩。

いずれにしろ両者とも喧嘩しながら人間と共存したいと願ってはいるようだ。


　　　　走り雨　カラスの羽根は濡れば色

　　　　喧嘩する　カラスと鳩と人間と

　　　　鳩が見る　カラスのデコも雨に濡れ
　　　　　　　　　　　　　　しゅう平