年取れば　可笑しくもないオナラ哉
　　　　　　　　　　　　　　　　しゅう平


　内閣官房参与の高橋洋一が新型コロナウイルス緊急事態宣言について「日本の緊急事態宣言といっても、欧米から見れば戒厳令でもなく屁へみたいなもの」とツイッターに投稿。

　国内のコロナ感染状況を「この程度のさざ波。これで五輪中止とかいうと笑笑」とツイートして批判を浴び辞任した。

　高橋発言は正論だが表現が悪かった。もともと一言居士を参与に登用した内閣の責任を問うべきだろう。

　この内閣はワクチン外交でも早期確保に失敗し、接種率は欧米諸国はもとより中東、南米諸国にも及ばない。オリンピックという錦の御旗を押し立てて外交戦を展開すれば開催時には100%を達成するだろうが。

　今世界はコロナワクチンの確保や発生源、民族虐待、香港・台湾問題等をめぐって米中が衝突し、これに欧州諸国やロシアが加わって冷戦からいつ熱戦に発展してもおかしくない。

　たまたま青空文庫で清沢冽の「暗黒日記」を読んだ。きっかけは宗教哲学の清沢満之と取り違えたわけだが、非常に面白かった。

　太平洋戦争下、豊かな国際感覚と幅広い交友をもとに、当時の政治経済状況や身辺の生活をいきいきと記した自由主義者の珍しい記録である。

　新聞雑誌記者からフリーの言論人に転身して欧米で取材、執筆活動を行い、日本の内政、外交に対する鋭い評論をした。

　満州国をめぐって欧米列強から激しく非難され、沸騰する国内世論を背景に、戦争指導をした東条内閣の体たらく、外相や国際連盟首席全権のスタンドプレーぶりなどを痛烈に批判。清沢は商業主義や迎合主義に流される日本のジャーナリズムを批判し、自由主義の立場を貫いた。

　さて80年後の現代。米中二大列強の間で外交に苦慮し、当時の新聞、雑誌、ラジオなどにくらべ弱体化した新聞、さらにはテレビ、インターネット、週刊誌などのマスメディアに翻弄される政治家。

　現政権は「暗黒日記」に描かれる戦時内閣の矮小な模倣に見えてくる。国民の有り様もほとんど変わっていないように見える。残念だ。