千曲川　禍福流すや　秋深し
　　　　　　　　　　　　　　しゅう平


学生時代、部活で何度か訪れたことがある長野県の千曲川が氾濫した。北信五岳や北アルプスを背景に川はゆったりと流れていた。

千曲川は美しい。しかしその歴史は水害史である。過去、幾たびも氾濫し、その度に川は曲がり、住民を苦しめた。

阿武隈川や支流の安達太良川も溢れた。隈とは曲のことで、川が蛇行すること。中流から下流にかけて隈が多く、そこで氾濫した。

近代になり腕達者な作家や詩人は、険しい山並みから流れ落ち豊かな平野を作る大河の畔で思索し詩想を練った。
　　　
人びとの悲惨が重く、長ければながいほどに思いは深く、弔う言葉は優しく美しくなった。

そして紡ぎ出されたいくつかの詩や物語は、いつの時代になっても人の心をとらえて離さないのだ。

　　　　
　　　　静まれよ　安達太良の山　その川よ
　　　　　　　　　　　　　　　　しゅう平