老いていけ　静かに静かに　秋深し
　　　　　　　　　　　　　　　しゅう平   


大阪にいる次兄に電話した。大型台風が襲うかもしれないと心配したためだが、まあそれは口実である。

彼は87歳である。だか、しっかりした会話がまだできる。頭の回転はすこぶる速く、昔のことも、現在の状況もしっかり語ることができる。

毎日1時間は散歩し、「いつ死んでもいいのに、なかなか死なない」と笑い、せっせと体を維持しようとしている。

姉二人と長兄が早々と亡くなり、その兄と二人だけになってしまうと、そんな兄が妙にいとおしい存在になってくるのだ。

血縁とはふしぎなもので、大勢いれば時にうっとおしいが、こう寥々としてくると、心淋しく、貴重に思えてくるのだ。

年をとることは、親はもちろん兄弟姉妹を亡くし、多くの友を失い、まっしぐらに孤独になることだ。