枯葉舞う　寂滅為楽の素軽さよ
　　　　　　　　　　　　　　　しゅう平




先日、ノーベル化学賞の下村脩さんが亡くなった。90才、死因は老衰とあった。近頃珍しい言葉である。

今、死因の1位はがんで29である％。亡くなった人の3.4人に一人がこの病気。２位心疾患15％、３位肺炎、４位脳血管疾患。

老衰は５位、わずかに６％である。老衰は加齢により心身の能力が衰えること。昔は「寿命が来た」や「寿命が尽きた」などと言った。

病気ではないので、苦痛を伴わない自然で穏やか死と思ってきた。一番望ましい終わり方ではないかと思う。

私の両親は二人とも自宅で老衰で亡くなった。明治31年生まれの父は82才。家族に囲まれて穏やかな死だった。

母は長女に看取られ、日に日に弱っていく肉体を自覚しながら、「死にたくない」と半年以上も抵抗し、90才で最期を迎えた。

肉体と意識が同時に衰えていくのなら、多分穏やかな死を迎えることができるのだろうが、母の場合はそうではなかったようだ。

不運な人生を悔い、衰える肉体を叱咤して死を拒否する。意識と肉体が乖離し、そこに激しい苦痛が生じたはずだ。

ひとくくりに老衰といっても様々あるのだろう。私は母の血を引いているので、病気をかわして老衰しても楽ではなかろう。