ニシン群来(くき)　如月の海に　春を告げ

　　 　ニシン群来　演歌のひとつも歌おうか

　　　 如月の　恋の記憶に　鰊そば

　　　 鰊そば　幟はためく京風情
　　　　　　　　　　　　　　　　                 　しゅう平


ニシンの群れが産卵に押し寄せて海を白くする「群来」が３日、北海道小樽市の沿岸で確認されたというニュースを読売で見た。

小樽港東側の海岸線沿いで約２キロにわたって海が乳白色に変わった。群来は、ニシンの群れが浅瀬に押し寄せ、雄の精子で白く濁る現象。

群来が確認されるのは今季で４年連続。どうやら漁獲量が激減したニシン漁が復活する兆しという。

明治30年代の初め、ニシン漁は最盛期を迎え、北海道の日本海沿岸で鰊御殿が建ったが、やがて漁獲は減り、昭和30年にニシン漁は幕と閉じた。

当時を栄華を今に伝える歌がソーラン節であり、ソーラン渡り鳥、石狩晩歌などの民謡や演歌である。

もっとも当方の記憶にあるニシンとは、身欠きニシンの昆布煮や昆布巻き、ニシンそばの味である。

ニシンそばは今でも京都の名物料理で、名所旧跡を訪ねると、傍にある茶店や食堂には必ずニシンそばの幟や暖簾が出ている。

甘辛く煮た身欠きニシンを熱いそばにのせただけの素朴なものだが、これが大変に旨い。アバンチュール(ちょっと古いが)の味付けでもあった。

身欠きニシンとは不思議な言葉である。ニシンのえらや内臓などを取り中骨を落として干しにしたものを欠き割り、身欠きといった。

身欠きニシンのことを、頭も腹も尻尾を失ってもなお人に奉仕する魚という風に教えられた記憶があるが、どうもそんな譬は見つからない。

おそらく小学校の頃、熱心な教師が徳育の一つとしてそんな話を作ったのかも知れないが、妙に頭に残っている。

身欠きといい、磨きといい、そんな言葉がいよいよ懐かしい現代世相である。